こんにちは。

化学物質過敏症(MCS)の妻を支える夫、静(しず)です。

家族が突然MCSを発症した時、当事者ではないパートナーは

「何をどこまで気をつければいいのか」

「自分まで生活を変えなきゃいけないのか」

と、戸惑いや葛藤を感じることも多いのではないでしょうか。

実は私自身、最初は戸惑いの連続でした。

この記事では、非当事者の夫という立場から、妻との暮らしの中で気づいた「MCSとの向き合い方」や、家族として大切にしているマインドについてお話しします。

これを読めば、同じように悩むご家族が、少しだけ肩の力を抜いて向き合えるヒントが見つかるはずです。

この記事を読むとわかること
  • 「どうして自分まで?」というモヤモヤした気持ちとの折り合いの付け方
  • 100点を目指さなくていい。家族が笑顔でいられる「ちょうどいい」距離感
  • 難しい知識は不要。今日からできる「一番近くにいる味方」としての接し方

化学物質過敏症により、発疹に苦しむ葵に、静が軟膏とガーゼを用意している。
【夫目線】化学物質過敏症の発症後、妻の肌に起きた異常|柔軟剤の香料で顔がただれた日【実体験】 化学物質過敏症(MCS)を発症した妻の症状は、想像していたよりもはるかに深刻でした。 特にひどかったのが、柔軟剤の香料による湿疹...

化学物質過敏症とは?においで体調を崩す病気

においがきついなぁ……。

え、そうかな?(……そんなににおいは感じないけどなぁ)

MCSとは、香水・洗剤・柔軟剤・タバコなどに含まれる微量の化学物質によって、頭痛や吐き気、ひどい倦怠感などが現れる病気です。

実は、妻が顕著に発症するまで、私は「気にしすぎじゃないか?」と思っていました。

しかし、隣で苦しむ姿を見るうちに、これが「気持ちの問題」ではなく「身体のSOS」なのだと痛感しました。

最初の異変は、何気ない買い物の最中だった

それは、ある日突然起こりました。

いつものように二人で買い物をしていた時のことです。

突然、妻が苦しそうな様子で、その場から慌てて逃げ出したのです。

あまりに急な出来事で、私は何が起きたのか分からず、ただ呆然と立ち尽くしました。

うぅ……、すごいにおいの人が近くに来て……。

目がかゆくて頭ガンガンする……。

葵、大丈夫!?(全然気づかなかった……。)

妻を追いかけ、ようやく追いついて話を聞くと……。

原因は、すれ違った人がまとっていた「柔軟剤」の強い香りでした。

確かに、以前から妻は「最近の洗剤はにおいがきつい」とこぼしたり、香りの強いコーナーで少し顔をしかめることはありました。

でも、当時の私は「ちょっと鼻が敏感なだけだろう」と、どこかで軽く受け止めてしまっていたのです。

まさかそれが、私たちの生活を一変させる「病のサイン」だとは、夢にも思わずに。

なぜ私は理解できなかった?|嗅覚の”麻痺”

学生時代、様々な香料に囲まれながらも、それが日常になっていて平然としている静。

今思えば、妻の苦しみを理解できなかったのは、私の嗅覚がすでに”麻痺”していたからだと思います。

振り返ってみると、私は子どもの頃からずっと、当たり前のように”強い香り”に囲まれて育ってきました。

  • 家では、香料入りの柔軟剤・洗剤は当たり前
  • 両親のタバコで、部屋は煙に包まれていた
  • 家族の車に乗れば、強烈な芳香剤が充満している
  • 学校に行けば、友人らの柔軟剤や制汗剤が混ざり合う
  • 部活動では、湿布やエアサロンパスのにおいが立ち込めている。

子ども時代からずっと、そんな生活が私の「普通」でした。

鼻をつくような強いにおいの中にいても、それが当たり前すぎて、不快感すら抱かなくなっていたのです。

だからこそ、妻が訴える「においの辛さ」が、最初はどこか遠い世界の出来事のように聞こえてしまったのかもしれません。

「香り=身だしなみ」だと思い込んでいた過去

大人になってからも、その環境はさほど変わりませんでした。

まるでそれが「大人のマナー」であるかのように、香料付きの洗剤や柔軟剤を使い続け、石鹸の香りがする制汗剤や、香水を使っていた時期すらあります。

その根底には、こんな強い思い込みがありました。

自分のにおいで、周りに不快な思いをさせられないよね

だから私は、”香りでごまかす”ことに必死になっていました。

しかし、今振り返ると気づくことがあります。

それは本当の意味での気遣いではなく、”においに鈍感になった結果の、独りよがりな自己防衛”だったのではないか、ということです。

香りで上書きすることに必死で、その香りが誰かを苦しめているかもしれないという可能性に、私の心はまったく向いていなかったのです。

妻のつらさを、本当には理解していなかった

だからこそ、妻がにおいで頭痛や吐き気を訴えても、その本当の辛さを理解しきれていませんでした。

最も近くにいるはずの私の心のどこかで、

「大げさなんじゃないか」「気にしすぎでは?」

そんな視線で見ていた自分がいたのです。

しかし、そんな私の傲慢さを打ち砕いたのは、妻の体に現れた明らかな異変でした。

かゆい…。いたい…。かゆい…。

……。(私は何ということを……。)

香料に触れた場所に広がる、生々しい「発赤、発疹、ただれ、腫れ」。

目に見えない「におい」が、これほどまでに残酷に、具体的な「傷」として妻の体を蝕んでいる。

その現実を目の当たりにしたとき、ようやく自分の間違いを認め、考えを改めることができました。

今ならはっきり言えます。

身体の症状も辛かったはずですが、それ以上に

一番の味方であるはずの夫に信じてもらえないこと

それこそが、一番深く妻を傷つけていたのだと。

発症をきっかけに気づいた「感覚の鈍さ」と後悔

MCSを発症した妻と向き合う中で、私は初めて、自分自身の「感覚の鈍さ」や「無自覚さ」を突きつけられました。

すべてをすぐに理解できたわけではありません。

正直に言えば、今でも

「もっと早く気づけていれば」「あの時あんな風に言わなければ」

と、後悔する場面は少なくありません。

それでも。

妻が感じている苦しみを少しずつ「想像」し、 これまで疑いもしなかった自分の「当たり前」を少しずつ手放していく。

そうやって一歩ずつ歩み寄ることで、私たちの暮らしは、以前よりもずっと「本当の意味で心地よいもの」へと形を変え始めています。

同じように戸惑う家族・パートナーへ

この記録は、過去の自分への深い反省であり、そして今、かつての私と同じ立場にいる人へのメッセージでもあります。

  • 大切な人の体調変化に戸惑っている人
  • MCSに悩む家族を懸命に支えている人
  • 「どう向き合えばいいか分からない」と一人で苦しんでいるパートナー

もしこの記事が、そんなあなたの心を少しでも軽くし、 「ひとりじゃない」 と感じるきっかけになれば──。

夫として、そして一人の人間として、それ以上にうれしいことはありません。

次回予告|MCS発症後、妻の肌に起きた異変

次回の記事では、MCSを強く発症した妻に起きた「肌の異変」について、夫目線で執筆しようと思います。

懸命な対症療法、当てにならないオンライン診断、検索の果てに行きついた答えと絶望、そして──。

同じ悩みを持つ方の参考になる内容をまとめます。

化学物質過敏症により、発疹に苦しむ葵に、静が軟膏とガーゼを用意している。
【夫目線】化学物質過敏症の発症後、妻の肌に起きた異常|柔軟剤の香料で顔がただれた日【実体験】 化学物質過敏症(MCS)を発症した妻の症状は、想像していたよりもはるかに深刻でした。 特にひどかったのが、柔軟剤の香料による湿疹...

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